蓄音機とは、レコードを回転させて、レコードのミゾに録音された音の振動を針で捉えて、ダイアフラムに伝え、ホーンで拡大する装置です。1877年にトーマス=A=エジソンによって発明されました。
蓄音機は大きく分けて、サウンドボックス(リプロデューサー)とホーン、回転するレコード(ターンテーブル)の3つの部分から成り立っています。
レコードを回転させる動力については、手動から電気モーター、ゼンマイ式の順に製造されました。
蓄音機のスタイルは、エジソン製やEMG製に限らずラッパ型、卓上型、ポータブル型、フロアー型に大きく分けられます。
電蓄(いわゆる現代のオーディオ)とは音の拡大方法が違い、電蓄はアンプとスピーカーで音を再生していますが、蓄音機はサウンドボックスの振動をホーンで拡大して音を再生しています。
音を記録するレコードには円筒(シリンダー型)と円盤(ディスク型)があり、録音の方法も縦振動方式と横振動方式があります。

蓄音機の各部名称は、メーカーによって多少異なります。

ポータブル型は持ち運びを考え、縦にしても機械が安定するように、トーンアームクリップや外付けの針箱があるのが特徴です。
蓄音機の音はノイズが多く貧弱でか弱い音と思われている方も多いと思いますが、大きな誤解です。蓄音機の時代には、ダンスホールや大きなサロンで何百人もの聴衆がその音を楽しんでいました。中型機であっても、百人以上の会場で、充分な音量があり、大型機になると三百人以上の会場でも充分に音楽を楽しむことができました。
蓄音機の音量調節は針によってするのが一番簡単な方法でした。弱音から強音までの各種の再生針を使い分けることで、音の調整をしたのです。またメーカーによっては、本体にボリューム機構を装備したものも製造されました。他にもホーンとトーンアームの中間の音道(スロート)を開閉することで、音量調節をする方法もありました。
ホーンはサウンドボックスの音を拡大する部分で、蓄音機の大きな特徴のひとつとなっています。ホーンには初期型のストレートホーン、シグネット(白鳥のようなという意味です)ホーン、リエントラント(折り曲げ)ホーンの3つが代表的なものです。材質は金属製(鉄、アルミ、真鍮など)、木製、紙製などがありました。
SPレコードは蓄音機で使用する横振動、円盤レコード(ラテラルカットまたはニードルカット)のことで、材質はシェラック混合物で作られ、後にビニール製のものも作られました。レコードの回転数は1分間に78回転です。1887年頃は70回転から82回転くらいまでまちまちの状態だったので、実に不便でした。1925年に電気録音の開始と共に回転数の統一が話し合われ、78回転をスタンダードとしました。スタンダードプレイイング略してSPと呼ばれます。但し外国ではSPの呼び名は通用せず、「78」とか「グラモフォンレコード」と呼ばれています。ちなみにLPレコードを蓄音機で演奏しても針が滑り、演奏できません。SPレコードは割れやすく、重いものです。
アウトサイドホーンモデルのことで、ラッパが本体の外に取り付けられています。ラッパの取り付け方により、フロントマウントホーンと、リアマウントホーンの2タイプがあります。
フロントマウントホーンは、ビクターのトレードマークに代表されるスタイルで、本体の前方にホーンの支持部があり、サウンドボックスとホーンが一体となってレコードを演奏します。1902年にトーンアームが発明されるまではこのスタイルでした。
リアマウントホーンは最も知られたラッパ型モデルで、ホーンの支持部が本体の後方についています。トーンアームが付けられ、サウンドボックスがホーンの重さから開放されて、ホーンの設計が自由になったため、ホーンが大きくなり、音質が向上しました。ホーン自体も装飾的となり、豪華なものも多く作られ、高級家具としてもてはやされました。
ホーンの材質は鉄製がほとんどですが、木製の豪華なホーンも作られました。ホーンの形は、ベルホーン、モーニンググローリーホーン、シグネットホーンなどがあります。
ラッパを本体に収納したモデルで、最初はホーンレスと呼ばれました。後には蓋が取り付けられ、ホーンも音質改善のために次第に大きくなりました。ラッパを無くした理由は、輸送中ラッパが壊れやすく、荷造りが大変であったことが挙げられます。
卓上型はあくまでもテーブルや台の上に置くもので、大きさにも限度があります。小さな本体でもよい音を出すために、はじめストレートホーンであったものを、長いホーンを折り曲げて収納することで、格段に音質が向上しました。
卓上型は、次世代の高級蓄音機(フロアー型)のステップとして大きく貢献しました。
フロアー型蓄音機は、床に直接設置して使用します。その多くは、脚が付いていて、床から少しホーンを離して演奏するように設計されています。脚の形も様々なものがあり、各メーカーはデザインに工夫を凝らしていました。また当時有名な家具職人が製作に加わり、その意匠の美しさを競い合いました。
フロアー型は縦に長いものをアップライトモデル、横に長いものをコンソールモデルといいます。
フロアー型蓄音機は、大型で重いため、中には移動のためにキャスターを付けたタイプもありました。キャビネットが大きくなった分、レコード入れやアクセサリー入れなどが取り付けられたものもあります。
ポータブル型は据え置き型と違い、横に移動することが多いので、そのための対策がなされています。据え置き型に比べ小型で薄く、軽量に作られています。アームの固定や針の保管状態、ターンテーブルの固定、レコードの収納などの様々な工夫が特徴です。ポータブル型の多くが、木製の箱の表面にレザークロスなどを張っています。外に持ち歩いて、埃や汚れがついても簡単にクリーニングできるようにとの配慮からです。
ポータブル型は全て蓋が付いていて、蓋が音の再生に大きな役割を担っています。本体下のホーンから出る音を蓋で反射拡大して、ホーンの長さを補っているのです。また、蓋はレコード入れとしても利用され、さらにクランクや針箱を収納しているものもあります。ポータブル型のターンテーブルは割りピンやワッシャ、ねじなどで固定されていて、そのままでは抜けないように作られています。これはポータブル型の大きな特徴のひとつです。